2012年3月30日金曜日

不斉付加反応、特に水素化における遷移金属触媒に使用されるキラルリガンド|詳細 - Astamuse(アスタミューゼ)


以下の情報は、出願公開日時点(2009年10月29日)のものです。

0001

本発明は、少なくとも2個のキラル中心を有し、かつ、(a)キラル芳香族若しくは複素環式芳香族アトロプ異性体であるか、又は(b)非キラル若しくはキラル面性異性体メタロセンである主鎖を有し、それぞれの場合において1個のPR基及び1個のP−キラル−P(O)HR基が結合しているリガンド(ここで、非キラルメタロセンが主鎖である場合、−P(O)HR基のR基は、少なくとも1個のキラル中心を含有する);その製造方法;これらの二座リガンドと遷移金属との金属錯体;並びに少なくとも1個の炭素/炭素又は炭素/ヘテロ原子二重結合を含有するプロキラルな有機化合物の水素による不斉合成、特に水素化における金属錯体の使用に関する。

0002

キラルリガンドとの金属錯体は、不斉合成において価値のある触媒であることが見出されている。実用的であるのは、充分な触媒活性だけでなく高い立体選択性も達成することができる金属錯体のものである。これら2つの特性がないと、経済的な理由によって産業的方法への規模拡大はされない。

0003

現在まで、どのようなリガンドとのどのような金属錯体がどのような反応条件下で、どのような不飽和基質のために、触媒活性及び立体選択性に関して実用的に利用可能な水素化の結果を生じるかを予測することは、依然として可能ではない。多数の異なる二座配位リガンドが、そのために、提供されており、その多くは酸素、硫黄、窒素及び/又はリン原子とのキレート化基を含有することができる(例えば、W. Teng, X. Zhang, Chem. Rev. 2003, 103, 3029-3069を参照すること)。これらの二座リガンドのうち、PΛN及びPΛPリガンドが有用であり、とくにキレート基が、アトロプ異性(ビスアレーン及びビスヘテロアレーン)又は面性異性(メタロセン)を有する芳香族化合物と結合している場合に有用であることが頻繁に見出されている。

0004

近年、式Aの単座ホスフィンオキシドベンゼン及び式Bの二座リガンドが記載されている〔Xiaobin Jiang with Prof. J. G. de Vries and Prof. B. L. Feringa, University of Groningen 29 Nov. 2004 (ISBN: 90-367-2144X); Xiaobin Jiang et al., Org. Lett., 5 (2003) 1503-6; and Xiaobin Jiang et al., Tetrahedron: Asymmetry, 15 (2004) 2223-9の論文を参照すること〕。

0005

化学式1

0006

これらのリガンドの製造は複雑である。合成は、一般にラセミ化合物を生じ、これは続いて、キラルカラムによる分取高圧クロマトグラフィーの助けによって、それらの鏡像異性体に分離される。この方法は、大規模の生産には非常に高価であり、不適切である。あるいは、幾つかの場合において、鏡像異性体は、選択的結晶化によりキラル補助試薬を用いて付加物として分離されている。しかし、この経路はあまりにも頻繁に不成功に終わっている。一般に、鏡像異性体のうちの一方しか実際的適用では必要とされないので、常に所望のリガンドの少なくとも半分はこれらの方法において失われている。

0007

式Aのリガンドは、プロキラルなイミン及びアルケンの不斉水素化におけるIr及びRh錯体に使用されており、良好な立体選択性であるものの、低い触媒活性〔ターンオーバー頻度(TOF)<3h−1〕が観察される。式Bのリガンドも、プロキラルなイミン及びアルケンの不斉水素化におけるIr及びRh錯体に同様に使用されているが、低い立体選択性及び非常に低い触媒活性(TOF<1h−1)が観察されている。

0008

簡単な方法で製造することができ、不斉触媒における金属錯体のリガンドとしても適している、主鎖に結合している第二級ホルフィン及びホスフィンオキシド基を有する更なるリガンドに対する大きな需要が存在する。

0009

予期しないことに、現在、主鎖に結合している第二級−P(O)HR基を有する及び場合により炭素原子を介して主鎖に結合している−PR基を有する光学的に純粋な異性体の製造は、主鎖が軸性キラリティーを有する芳香族化合物であるか、又はリガンドが少なくとも1つのキラルメタロセンを含有する場合に、特に簡単な方法によって成功することが見出されている。更なる光学中心並びにキラルな第二級ホスフィンオキシド基の存在が、二座リガンドの合成において、多くの場合に優れたジアステレオ選択性をもたらし、加えて、結晶化による又は非キラルカラムの分取クロマトグラフィーによる立体異性体の簡単な精製又は分離を可能にする。

0010

また、予期しないことに、これらのリガンドは触媒特性に予想外に大きな影響を与え、金属錯体における既知のリガンドBと比較して、予期し得ないほど触媒として高い触媒活性で頻繁に特徴付けられ、プロキラルな基質に依存して、非常に良好な立体選択性から非常に高い立体選択性までを達成できることが見出されている。

0011

本発明は、最初に、少なくとも2個のキラル中心を有する、ジアステレオマー又は純粋なジアステレオマーの混合物の形態での、式I:

0012

化学式2

0013

〔式中、
第二級ホスフィンは、置換基として炭化水素基又はヘテロ炭化水素基を有する第二級ホスフィン基であり;
Qは、ビスアリール又はビスへテロアリール架橋結合に対して2個のリン原子がオルト位に結合している、軸性キラル中心を有する二価ビスアリール又はビスへテロアリール基であるか、或いはQは、第二級ホスフィンのリン酸原子がシクロペンタジエニル環に直接又はC〜C炭素結合を介して結合している、面性キラル中心を有するか又は面性キラル中心を有さない二価フェロセニル基であり、
−P(=O)HR基は、同じシクロペンタジエニル環でそこに結合した第二級ホスフィンに対してオルト位に結合しているか又は他のシクロペンタジエニル環に結合しており、
は、キラルなリン原子であり、そして
は、炭化水素基、ヘテロ炭化水素基又はフェロセニル基であり、ここで、Qが面性キラル中心を有さないフェロセニル基の場合、Rは面性キラル中心を有するフェロセニル基である〕
で示される化合物を提供する。

0014

本発明の文脈において、「キラル中心」は、面性キラル中心、軸性キラル中心、又は原子中心キラル中心であることができ、この場合、原子は好ましくはC又はPである。

0015

式Iの化合物は、通常2〜5つ、好ましくは2〜4つ、より好ましくは2又は3個のキラル中心を有する。

0016

式Iの化合物は、例えば、芳香族基の置換基において、フェロセンのシクロペンタジエニルの置換基において、又はC〜C炭素鎖において、更なるキラル中心として少なくとも1個の不斉炭素原子を含有することができる。

0017

説明において、式Iの化合物は、−P(=O)HR基がヒドロキシル形態−P(OH)Rで表される互変異性型も含むことに留意すること。2つの互変異性型において、リン原子は、不斉及びキラルである。

0018

架橋基Qは、非置換であることができるか、又はハロゲンのような、若しくは炭素原子、酸素原子、硫黄原子若しくはケイ素原子を介して結合している炭化水素基のような置換基Rにより、例えば1〜6回、好ましくは1〜4回、より好ましくは1回から2回置換されていることができ、ここで置換基Rの炭化水素基は置換されていることができる。架橋基Qが、ビスアリール又はビスへテロアリール基である場合、環結合置換基、例えば、アルケン、アルケニレン、アルキジエニレン、アルキレンジアミノ又はアルキレンジオキシを提供することもできる。少なくとも2個の置換基がQ基に結合している場合、これらは同一又は異なっていることができる。

0019

場合により置換されている置換基Rは、例えば、C〜C12アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、より好ましくはC〜Cアルキルであることができる。例は、メチル、エチル、n−又はi−プロピル、n−、i−又はt−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル及びドデシルである。

0020

場合により置換されている置換基Rは、例えば、C〜Cシクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキルであることができる。例は、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチルである。

0021

場合により置換されている置換基Rは、例えば、C〜Cシクロアルキルアリキル、好ましくはC〜Cシクロアルキルアルキルであることができる。例は、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル又は−エチル、及びシクロオクチルメチルである。

0022

場合により置換されている置換基Rは、例えば、C〜C18アリール、好ましくはC〜C10アリールであることができる。例は、フェニル又はナフチルである。

0023

場合により置換されている置換基Rxは、例えば、C〜C12アラルキル(例えば、ベンジル又は1−フェニルエタ−2−イル)である。

0024

場合により置換されている置換基Rは、例えば、トリ(C〜Cアルキル)Si又はトリフェニルシリルであることができる。トリアルキルシリルの例は、トリメチル−、トリエチル−、トリ−n−プロピル−、トリ−n−ブチル−及びジメチル−t−ブチルシリルである。

0025

置換基Rは、例えば、ハロゲンである。例は、F、Cl及びBrである。

0026

場合により置換されている置換基Rは、例えば、式:−OR05、−SR05、−S(O)R05及び−S(O)05のアルコキシ基、チオ基、スルホキシド又はスルホン基であることができ、式中、R05は、C〜C12アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、より好ましくはC〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキル;C〜C18アリール、好ましくはC〜C10アリール;又はC〜C12アラルキルである。これらの炭化水素基の例は、置換基について上記に既に記述されている 。

0027

置換基Rは、例えば、−CH(O)、−C(O)−C〜Cアルキル又は−C(O)−C〜C10アリールであることができる。

0028

場合により置換されている置換基Rは、例えば、−CO03又は−C(O)−NR0102基であることができ、ここで、R01、R02及びR03は、それぞれ独立して、C〜C12アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキルメチル若しくは−エチル、非置換又はC〜Cアルキル−若しくはC〜Cアルコキシ置換のC〜C10アリール若しくはC〜C12アラルキルであるか、或いはR01及びR02は、合わさって、トリメチル、テトラメチレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン又は3−� ��C〜Cアルキル)アミノ−1,5−ペンチレンである。R01、R02及びR03は、アルキルとして、直鎖又は分岐鎖であることができ、アルキルは、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する。R01、R02及びR03は、アリールとして、例えば、フェニル又はナフチルであることができ、アラルキルとして、ベンジル又はフェニルエチルであることができる。R01、R02及びR03の幾つかの例は、メチル、エチル、n−又はi−プロピル、n−、i−又はt−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、フェニル、ベンジル、メチルフェニル、メチ� ��ベンジル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル及びメトキシベンジルである。

0029

場合により置換されている置換基Rは、例えば、−S(O)−O−R03、−S(O)−O−R03、−S(O)−NR0102及び−S(O)−NR0102基であることができ、ここでR01、R02及びR03は、それぞれ、選択肢を含めて上記で定義されたとおりである。

0030

Qが、単環式芳香族化合物を有するビスアリール又はビスへテロアリールの二価基である場合、好ましくは、2つの単環式芳香族化合物を結合する結合(架橋結合)に対して他のオルト位の一方又は両方は、回転を防ぐために置換されている。この場合、好ましい置換基は、C〜C12アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、より好ましくはC〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキル;C〜C18アリール、好ましくはC〜C10アリール;又はC〜C12アラルキル;C〜C12アルコキシ、好ましくはC〜C8アルコキシ、より好ましくはC〜Cアルコキシ;C〜Cシクロアルコキシ、好ましくはC〜Cシクロアルコキシ;C〜C18アリールオキシ、好ましくはC〜C10アリールオキシ;又はC〜C12アラルキルオキシ;C〜C12アルキルチオ、好ましくはC〜Cアルキルチオ、より好ましくはC〜Cアルキルチオ;C〜Cシクロアルキルチオ、好ましくはC〜Cシクロアルキルチオ;C〜C18アリールチオール、好ましくはC〜C10アリールチオ;又はC〜C� �2アラルキルチオ、及びトリ−C〜Cアルキルシリルである。

0031

Qが、単環式芳香族化合物を有するビスアリール又はビスへテロアリールの二価基である場合、二価置換基は、ビスアリールの場合、2個の隣接炭素原子に、特に5,6及び/若しくは5′,6′位(縮合環)又は6,6′位で結合していることも可能である。二価置換基は、ω,ω′−C−から−C−アルキレン、−C−から−C−アルキレン−O−、−C−から−C−アルキレン−N(C〜Cアルキル)−、−O−(C−から−C−アルキレン)−O−、−(C〜Cアルキル)N(C−から−C−アルキレン)−N(C〜Cアルキル)−、−O−(C−から−� �−アルキレン)−N(C〜Cアルキル)−、−CH−CH=CH−、−O−CH=CH−、−S−CH=CH−、−N(C〜Cアルキル)−CH=CH−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=N−、−CH=CH−N=CH−、−CH=N−CH=CH−、−N=CH−CH=CH−、−CH=N−CH=N−、−N=CH−CH=N−及び−CH=N−N=CH−であることができる。

0032

置換基Rの炭化水素基は、例えば、一置換又は多置換、例えば、ハロゲン(F、Cl若しくはBr、特にF)、−OH、−SH、−CH(O)、−CN、−NR00102、−C(O)−O−R003、−S(O)−O−R003、−S(O)−O−R003、−P(OR03、−P(O)(OR003、−C(O)−NR001002、−S(O)−NR00102、−S(O)−NR001002、−O−(O)C−R004、−R001N−(O)C−R004、−R001N−S(O)−R004、−R001� ��−S(O)−R004、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cシクロアルキル、フェニル、ベンジル、フェノキシ又はベンジルオキシにより、一置換から三置換、好ましくは一置換又は二置換されていることができ、ここで、R001及びR002は、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジルであるか、或いはR001及びR002は、合わさって、テトラメチレン、ペンタメチレン又は3−オキサペンタン−1,5−ジイルであり、R003は、水素、C〜Cアル キル、C〜Cシクロアルキル、フェニル又はベンジルであり、そしてR004は、C〜C18アルキル、好ましくはC〜C12アルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cヒドロキシアルキル、C〜Cシクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)、C〜C10アリール(例えば、フェニル若しくはナフチル)又はC〜C12アラルキル(例えば、ベンジル)である。

0033

式Iの二価Q基は、2つの炭化水素芳香族化合物、2つの複素環式芳香族化合物又は1つの炭化水素芳香族化合物及び1つの複素環式芳香族化合物が互いに結合している基であることができる。5員芳香族複素環を有する縮合複素環式芳香族化合物において、芳香族複素環、好ましくは炭化水素環が結合していることができる。炭化水素芳香族化合物の例は、特に、ベンゼン、インデン及びナフタレンである。複素環式芳香族化合物及び縮合複素環式芳香族化合物の例は、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、N−(C〜Cアルキル)ピロール、N(C〜Cアルキル)インドール、ピリジン、キノリン及びイソキノリンである。

0034

ビスアリーレン又はヘテロアリーレンの好ましい二価Q基は、式II及びIIa:

0035

化学式3

0036

〔式中、1つの又は両方のRzは、置換基であるか又は縮合環の一部であり、環は、それらに結合している炭素原子と合わさって、非置換であるか又は一置換若しくは多置換されている、場合により縮合している5員又は6員の芳香族環又は芳香族複素環を形成する〕
で示されるものである。

0037

本発明の好ましい実施態様において、式Iの二価Q基は、ビスアリール又はビスへテロアリールとして、式III、IV、V又はVI:

0038

化学式4

2012年3月28日水曜日