2012年6月3日日曜日

Nikon | 星空案内 | 2012年3月の星空


日中の暖かさに、少しずつ春を感じるようになってきました。夜の寒さも和らぎ始め、星空を眺めやすくなっているでしょう。油断は禁物ですが、冬よりもちょっとだけ気軽に、空を見上げられそうです。

今月はまず、夕空で金星と木星の素晴らしい輝きを楽しみましょう。最接近する14日と細い月も並ぶ26日の両日、忘れずに夕空を眺めてみてください。

空が暗くなると「しし座」など春の星座たちが南の空に見えはじめます。東の空には「うしかい座」の1等星アルクトゥールスや「おとめ座」の1等星スピカも見えます。また、「しし座」で赤く光る火星、スピカと並ぶ土星も見ごろです。どちらもほぼ一晩中見えるので、目にしたり観察したりする機会が増えそうですね。

では3月の星空案内を始めましょう。

3月の星空

南の空

2012年3月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た南の星空のようすです。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

月は、満月(8日)、上弦(31日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

北の空

2012年3月1日ごろの22時、15日ごろの21時、30日ごろの20時に、東京で見た北の星空のようすです。大阪ではこの時刻より約20分後に、福岡では約40分後に同様の星空になります。

月は、上弦(1日)の位置を入れてあります(時刻は21時)。

3月の天文カレンダー

3月の惑星

水星

水星は、3月の半ばごろまでは夕方の西の空に見えます。5日が東方最大離角で太陽からもっとも離れるので、この前後数日間が見やすい時期です。高度は低いですが、見晴らしの良い場所で探してみましょう。双眼鏡を使うと見つけやすくなります。

3月の半ばを過ぎると太陽に近くなり、見えなくなります。

金星

金星は、夕方から宵のころに西の空に見えています。

マイナス4等級と明るく、一番星として美しく輝いています。また、木星との接近も楽しみです。最接近する14日前後や、金星・細い月・木星と一直線に並ぶ26日の光景は見逃せません。

火星

火星は「しし座」を動いています。

夜8時ごろに南東の空に見え、真夜中ごろには真南の空の高いところで目立っています。明るさはマイナス1等級前後で、赤っぽい色がとても目立ちます。

6日に地球に最接近します。急に見え方が変わるようなことはありませんが、最接近はおよそ2年に一度しか起こらない現象なので、この前後の期間にしっかりと火星の色や明るさを目に焼き付けておきましょう。

木星

木星は「おひつじ座」にあります。


天秤座に見えるは、今年の何時ですか?

夕方から宵のころに南西の空に見え、夜9時半ごろに沈みます。明るさは約マイナス2等級で、金星には及ばないもののよく目立ちます。

金星と並んで見えており、最接近するのは14日です。また、26日は金星・細い月・木星と一直線に並ぶので、ぜひ夕空に注目しましょう。

土星

土星は「おとめ座」にあり、1等星スピカと並んでいます。

夜8時ごろに昇ってきて、未明の2時ごろに南の空に見えます。10日の深夜から11日明け方には、月・スピカ・土星が一直線に並びます。

天体望遠鏡を使うと、環が見えます。ほどよく環が開いた、いかにも土星らしい姿を観察してみましょう。

3月の流星群

3月は、とくに目立った流星群の出現はありません。

今月の星さがし

今月は、約2年ぶりに地球と最接近する火星の話題と、夕空で接近する金星と木星の話題をご紹介します。

地球と火星が最接近

夜空を見上げると、赤(オレンジ)っぽい色をした明るい星が目に付くようになってきました。太陽系の惑星の1つ、地球の外側を公転している火星です。火星が赤いのは、表面が酸化鉄(鉄さび)で覆われているためです。


地球と火星が最接近する日と距離

地球と火星の最接近は、約2年2か月ごとに起こります(前回は2010年1月でした)。地球のほうが火星よりも公転周期が短く、太陽の周りを速く1周するので、地球は火星を追い越していきます。この「追い越す」ときが、地球と火星が最接近するときです。

最接近のときの地球と火星の距離は一定ではありません。これは、火星の軌道がかなりつぶれた楕円軌道だからです。近いときには6000万kmを切るような大接近となりますが、今回3月6日の最接近は1億km以上離れた小接近です。

火星の楽しみ方の1つは表面の模様を天体望遠鏡で観察することです。北極と南極に広がる白い極冠(きょっかん:水と二酸化炭素の氷塊)や黒い部分が特徴的ですが、今回の最接近は1億kmも離れているので、かなり大きい天体望遠鏡でなければ模様は見えなさそうです。4年後(2016年5月)の中接近のころには少しは見やすくなりますが、それまで待てないという方は科学館や公開天文台などで開かれる観望会に参加して、大きい天体望遠鏡を覗かせてもらいましょう。

また、火星には多くの探査機が送り込まれており、時々興味深い発見が報じられたり高解像度の画像が公開されたりします。地球からではどんなに大口径の望遠鏡を使っても見えない姿を届けてくれる探査機からのニュースにも注目してみてください。

模様が見えなくても、マイナス1等級で輝く様子は見ものです。夜空を見上げて、春を思わせる温かみのある赤い星を眺めてみましょう。

夕空で金星と木星が接近

この冬から春にかけては、宵の明星の金星が夕方の西の空でとてもよく目立っています。2月下旬ごろからはここに木星も仲間入りし、見事な共演を見せています。


銀河とブラックホールの関係は何ですか?

金星と木星が最接近するのは14日で、夕空に2つの明るい輝きが並ぶ光景は必見です。また、その日だけでなく前後の日も続けて観察すれば、並び方が変化していく様子もよくわかるでしょう。

14日よりもさらに見逃せないのが26日で、金星と木星の間に細い月が並びます。観察するのに特別な道具は不要で、晴れてさえいれば夕方に西の空を眺めるだけです。ご家族、お友だち、お勤め先の同僚の方など、ぜひ多くの方と一緒に、5分だけでも時間を作ってこの美しい現象を楽しみましょう。


日没約40分後の金星と木星の見え方(3日おき)。もっとも近づくのは14日。26日には間に細い月も並ぶ。上旬には低空に水星も見えている

ところで今月は「火星と地球の接近」と「金星と木星の接近」という2つの「接近」を取り上げましたが、それぞれ意味が違うことに注意です。「火星と地球」は宇宙空間の中で実際の距離が近づいている現象、「金星と木星」は地球から見た見かけ上の接近現象です(実際は約9億km離れています)。星空案内でご紹介する天文現象は、ほとんどの場合が後者の「見かけ上の接近」ですが、共演を楽しむと同時に「実際の距離はどのくらい離れているのだろう」といったことにも、ちょっと想像をめぐらせてみてはいかがでしょうか。

今月の星座

『おおぐま座』

今月の星座では「おおぐま座」をご紹介しましょう。

北極星を見つける目印として有名な「北斗七星」、この北斗七星は星座ではなく、「おおぐま座」の一部です。星図を見ると、北斗七星の水を汲む部分が熊の腰にあたり、柄の部分が尻尾にあたるのがわかります。顔や胴体、足の星も見つけられるでしょうか。


「おおぐま座」(銀河の画像は © ESO DSS2 (AURA))

「おおぐま座」が夜9時ごろに高いところに上ってくるのは春ですが、日本からは、ほぼ1年中いつでも北の空のどこかに見ることができます。一番高く上るころには北斗七星が伏せた角度(上の図が180度回転したような見え方)になっているので、熊は仰向けになり、走り高跳びの背面跳びのような格好をしています。北斗七星だけでなく熊の姿まで想像してみると、夜空で躍動する様子が思い描けて面白いかもしれません。北斗七星以外の星は暗めですが、足先や鼻の星の明るさは北斗七星の真ん中の3等星メグレズと同じくらいなので、意識して探してみましょう。

ミザール&アルコル

北斗七星の柄の端から2番目、2等星のミザールのすぐそばには、よく見ると別の暗い星があります。4等星のアルコルです。

古くから知られている二重星で、兵士の視力検査に使われたとも言われています。視力が良い人なら肉眼でも2つの星が見えますが、アルコルは4等級と暗いので空の条件が良いことも大切です。双眼鏡を使えば、少し視力が悪かったり町明かりの影響があったりしても分離して見えるでしょう。

天体望遠鏡を使うと、もう1つアルコルとは別の星があることもわかります。お持ちの方は観察してみてください。


rの式は何乗です。

銀河M81、82

北斗七星の水を汲む部分の星、2等星のフェクダとドゥベを結んだ線を同じ長さほど延ばしたあたりに、比較的明るい2つの銀河が並んでいます。きれいな形の渦巻銀河M81と、葉巻のような不規則な形の銀河M82です(Mは「メシエカタログ」の頭文字です)。

この2つの銀河は見かけ上たまたま並んでいるのではなく、実際に同じくらいの距離(約1200万光年)のところにあります。お互いに重力的な影響を及ぼしあっており、とくにM82で起こっている爆発的な星形成はM81の影響だと考えられています。

空がじゅうぶん暗いところなら口径5cmほどの双眼鏡でも見つけられます。天体望遠鏡なら、形の違いもわかるかもしれません。銀河のなかでは見やすいほうなので、条件の良いときに観察に挑戦してみてください。

真夜中の星空

夜遅く帰ってくる人のため、ちょっと夜更かしの人のため、真夜中の星空をご案内しましょう。

図は3月中旬の深夜1時ごろの星空です。4月中旬の23時ごろ、5月中旬の21時ごろにも、この星空と同じ星の配置になります(惑星は少し動きます/月は消しています)。


2012年3月15日 深夜1時ごろの空

真南の空に「春の大三角」が見えています。その一角、「おとめ座」の1等星スピカのそばには土星があるので、今年の春の大三角はとがった台形のようにも見えます。大三角の星たちと土星の、色や明るさの違いにも注目してみましょう。

春の大三角の少し西、「しし座」のお腹のあたりでは、赤っぽい色をした火星が輝いています。小接近とはいえ、他のどの星よりも明るく目立ちます。

北の空の高いところには、「北斗七星」が見えています。今月ご紹介したとおり、北斗七星は「おおぐま座」の一部です。北斗七星だけでなく、熊の顔や足の星も探してみてください。

夜中になれば、夏の星座も見え始めます。北東の空には「はくちょう座」のデネブや「こと座」のベガ、南東の空には「さそり座」のアンタレスが昇ってきています。夜更かしした日には、夏の1等星も見つけてみましょう。

星空観察のワンポイントアドバイス

惑星観察のポイント

水星:見ごろを知る

水星は太陽系のもっとも内側を回る惑星です。つまり、見かけ上太陽から大きく離れることがないので、夕方の西の低空か明け方の東の低空にしか見られません。

「最大離角」という、太陽からもっとも大きく離れるころの前後数日間しかチャンスはありません。「今月の天文カレンダー」「今月の惑星」を参考に、見ごろを逃さないようにしましょう。また、東西の低空が開けているところを探しておくのも大切です。

金星:月との接近や満ち欠けを楽しむ

「宵の明星」「明けの明星」として知られている金星は、水星と同様に夕方か明け方にしか見られません。ただし、水星よりは太陽から大きく離れますし、地球に近いなどの理由でひじょうに明るく輝くので、金星を見ること自体は難しくありません。


金星の楽しみ方のひとつとして、月との(見かけ上の)接近を眺めることがあります。夕方の西の空に見える月、明け方の東の空に見える月、どちらも細い月ですので、必ず「細い月と金星の接近」になります。双眼鏡で眺めたり、地上風景を入れて写真撮影をしたりして楽しみたいものです。

また、金星は月と同様に大きく満ち欠けして見える天体です。月のように日ごとに大きく満ち欠けするわけではありませんが、天体望遠鏡で長期間にわたって観察すれば、半月のように見えたり爪のように細く見えたりします。

火星、木星、土星:空の高いところにあるときを狙う

火星、木星、土星の3つは、天体望遠鏡で観察したい惑星です(木星のガリレオ衛星は双眼鏡でも楽しめます)。天体望遠鏡を向ければ模様や環が見えますが、できれば空の高いところにあるときを狙うようにしましょう。低いところにあると、地上の明かりの影響を受けたり大気の揺らぎの影響を大きく受けたりします。「いつでも見える」からこそ「よりよい条件を狙う」わけです。とくに、「衝」というタイミングのころは真夜中にもっとも高く昇るので、観察に適しています。

それぞれの見どころをもう少し詳しく紹介すると、

  • 火星:約2年2か月ごとに地球と接近して明るくなり天体望遠鏡で大きく見えるので、その前後がベスト。表面の模様も見えるかもしれない
  • 木星:縞模様や大赤斑(巨大な渦巻き模様)に注目。ガリレオ衛星の位置が毎日変わるのも面白い
  • 土星:環は5cmクラスの小口径天体望遠鏡でも見える。大きめの天体望遠鏡なら、環の中に隙間があるのがわかる

となります。

また、どれも肉眼で見える明るい惑星なので、金星と同様に月との接近も楽しみです。金星と違って半月や満月との接近もありますので、さまざまなバリエーション、シチュエーションで眺めてみましょう。

天王星、海王星:位置をよく確かめて双眼鏡で

天王星(およそ6等)と海王星(およそ8等)は暗いので、見つけるのが大変です。見ごろのころには星図付きで解説していますが、周りの星の並びとよく見比べながら探す必要があります。このとき、天体望遠鏡では視野が狭く見比べるのが難しいので、広い視野を持つ双眼鏡で探してみましょう。

惑星同士の見かけ上の接近を眺めたり、(観察ではないですが)探査機からの最新ニュースや高解像度の画像にワクワクしたりといった楽しみ方もあります。じょじょにステップアップしながら、地球を含めた8惑星全部の観察に、ぜひ挑戦してみてください。



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