2012年5月30日水曜日

惑星


惑星

 

第一部−2− 宇宙の科学

第4章 惑星

1.惑星(2) 惑星各論−3−

c.火星(Mars)

 火星は太陽からは4番目の惑星である。その軌道の平均半径は1.5237AUであるが、軌道の離心率が0.0934と比較的大きく(めい王星の0.2490、水星の0.2056に次ぐ)、太陽にもっとも近づくとき(近日点距離1.3814AU)と、もっとも遠ざかるとき(遠日点距離1.6660AU)の差が大きい。地球の軌道も離心率0.0167のだ円であるので、衝のときに接近するとしても、その距離はときによってかなり異なり、上の値を使えば0.507AU〜0.6827AUとかなりの差が生ずる。火星との会合周期は779日(約2年)であるが、大接近は15年、あるいは17年くらいの周期で訪れる。次回の大接近は2018年である。

 火星は1.0260日(24時間38分)の周期で自転していて(対恒星自転周期)、自転軸の傾き(公転面に垂直な向きに対する傾き)も地球の23.44°に近い25.19°である。だから、火星には地球と同じような季節の変化がある。ただし、公転周期が1.88年であるので、それぞれの季節が地球より長く続くことになる。

 火星の赤道半径は3396kmであり地球の半分程度、質量は1/10程度である。密度は地球の5.52×103kg・m-3に対して、3.93×103kg・m-3でしかない。これは、金属でできている核の相対的な大きさが、地球より小さいためだろう。表面重力は地球の0.38倍であり、表面からの脱出速度は5.02km・s-1(地球は11.18km・s-1)である。この表面重力では、火星の位置でも大気をつなぎ止めておくためには十分でなかったと考えれる。

 実際、火星表面での大気圧は5.6hPa(「比較惑星学」岩波地球惑星科学講座12、1997年、以下大気成分も同じ)でしかない。この値は地球の1/200程度、地球でいうと35km上空の気圧ということになる。大気の主成分は二酸化炭素(95.32%)。ほかのちっ素(2.7%)、ネオン(2.5%)、アルゴン(1.6%)が続く。二酸化炭素はあるが、大気そのものが薄いので温室効果は弱い(温室効果がない場合と比べて6℃上げるだけ)。そのため表面温度は低く-63℃でしかない。ただし、赤道直下の正午近くには25℃程度まで上昇することもある。逆に冬の極地方では-120℃まで下がることもある。

 火星が赤く見えるのは、表面が赤い砂におおわれているためである。これは酸化鉄の色で、昔、大気に酸素があったのかもしれないが、このような形で地表に固定されてしまっている。火星全体は大きくいうと、赤い砂におおわれた砂漠であるといえる。


なぜ金星は高い表面tempertureを持っている

 極地方には極冠という白いものが見られる。これは氷(H2O)だけではなく、大気の主成分である二酸化炭素が低温のためにドライアイスになったものも含まれている。極冠は季節により消長する。夏にはドライアイスは昇華して氷だけになってしまう。このため、大気圧もかなり変動する。氷の厚さ(つまり水の量)についてはよくわかっていないが、大量の氷(つまり水が)存在している可能性が高くなってきた。

 この薄い大気でも、表面の砂を巻き上げて、火星表面を覆うような大規模な砂嵐を起こすことがある。またこの薄い大気中に雲が浮かぶこともある。

 火星の地形は、北半球はなめらかな平地、南半球は凹凸に富む高地という両半球で対照的なものになっている。もちろんなぜなのかはわかっていない。このように半球により様子が異なるのは、月にも見られる。

 赤道付近にはタルシス高原という、巨大火山が並んでいる高地がある。その西の端には太陽系最大の火山といわれるオリンポスがそびえている。オリンポスのすそ野の直径は600km(東京−神戸を越える、面積ではイギリス以上になる)、高さは26000m、火口の直径は80km(この中に富士山が入る)というものである。なぜかすそ野の端は7000mの断崖となっている。タルシス高原を形成する火山群は、ハワイなどと同じ盾状火山である。しかし、地球最大の火山というハワイ島ですら海底から測っても高さ9000m、体積にするとオリンポスの1/10でしかない。小さい火星に、なぜこのような巨大な火山が存在するのかも謎である。ただし、これらの火山はすべて数億年前以上には活動を終えている。

 火星にはまた、タルシス高原の近くにマリネス峡谷という"峡谷"がある。長さ5000km、最大の幅200km、深さ7000mという巨大なものである。この"峡谷"は、侵食作用でできたものではなく、大規模な地殻変動でできたものである。ただし、マリネス峡谷に流れ込むたくさんの小さな溝は、流水の働きでできたと考えられる。

 流水によると思われる地形は他にもあり、かつて火星表面には水(液体)が存在していた、水が存在できる時代があったとおもわれる。今でも地下には水(地下水)があって、それが浸み出してつくったと考えられるような地形もある。

 火星にもクレータはあるが、月や水星のクレータと異なり、かなり侵食を受けている。

 火星に生物が存在している(していた)かは大きな問題であるが、現在のところいる(いた)という明白な証拠は得られていない。 

上の写真はNSSDC Photo Gallery:

上の写真は、一番右下以外は

上の写真はマーズ・グローバル・サーベイヤー:

上の写真はマーズ・パス・ファインダー:

上の写真はスピリット:

上の写真はマーズ・リコネサンス・オービター(

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どのように窒素を見つけるのですか科学者

c−2.火星の衛星

 火星にはフォボスとダイモスの二つの衛星がある。いずれも1877年に発見された。おそらく小惑星が火星の引力によってとらえられたものだと考えられている。

 フォボスは内側をまわる衛星で、大きさは13km×11km×9kmといびつな、いわばジャガイモのような形をしている。表面にはクレーターがたくさんあり、中にはフォボス本体の1/3に達する巨大なものもある。軌道の長半径は火星の半径の2.76倍((9375km)であり、火星の自転より速い0.3189日(7時間40分)なので、火星上では1日に3回西から昇って東に沈むことにある。フォボスは火星にだんだん近づいており、5万年後には火星に衝突するといわれている。

 1988年に打ち上げられた旧ソ連のフォボス1号、2号はフォボスを探査する目的であった。1号は火星に到着する前に通信途絶、2号はフォボスに接近したが、フォボスに着陸機を投下する前に通信が途絶した。

 ダイモスの大きさは8km×6km×5kmとフォボスよりさらに小さい。フォボスと同じくジャガイモ型をしているし、表面がクレータにおおわれいてるのも同じである。軌道の長半径は火星の半径の6.72倍(23000km)であり、公転周期は1.2426日(31時間)である。

 なお、ガリバー旅行記に出てくる火星の衛星の話はこちらを参照。

上の写真はNSSDC Photo Gallery:

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用語と補足説明

Mars:ローマ神話ではMarsは軍神(ギリシャ神話ではアレス)。赤い色が血を連想させるのであろう。ちなみに、夏によく見える星座であるさそり座の中の一番明るい恒星は、火星と同じように赤いアンタレスであるが、これはアンチ・アレス(火星に対抗するもの)という意味である。

火星大接近:細かくいうとこと大接近のときの値もかなり変化する。2003年8月27日には「6万年ぶりの大接近」と騒がれた。実際このときは5576万km(0.3727AU)まで近づいた。これを上回る接近は2287年8月29日まではない。この件については国立天文台の「天文ニュースNo.616」(2003年2月6日)、「天文ニュースNo.659」(2003年7月22日)を参照。

火星探査機:アメリカは1962年から1973年にかけてマリナー・シリーズと称して、水星・金星・火星に探査機を打ち上げている。なかでも1964年に打ち上げられたマリナー4号、1971年に打ち上げられたマリナー9号は火星のよい画像を送ってきた。


どのように我々は赤方偏移を使用していますか:

 しかしなんといっても大きな成果を上げたのは、1975年に打ち上げられたバイキング1号、2号であろう。バイキングは火星のまわりを回って写真撮影・観測を行うオービターと、火星に軟着陸をするランダーに別れている。ランダーは気象観測や岩石の分析、写真撮影ばかりではなく、火星に生物がいるかどうかの実験も行った。

 バイキングからほぼ25年ぶりの1997年、「より速く、より良く、より安く」というNASAの新方針のディスカバリー計画のもとに打ち上げられたマーズ・パスファインダーは、エアバッグを使った着陸方法や、ローバー(探査車)ソジャーナーによる探査を行い、実況中継も行った。この少し前、1996年に打ち上げられたマーズ・グローバル・サーベイヤーは、詳細な火星地形の探査が目的である。

 アメリカは1999年マーズ・クライメート・オービター、マーズ・ポーラー・ランダーと立て続けに火星探査機を失敗した。その後、2001年マーズ・オデッセイ(火星を周回して表面を調査する)、2003年にはマーズ・エクスプロレーション・ローバ(ローバーの名はスピリットとオポチュニティ)と精力的に探査を続けている。このローバーは1年間の運用予定だったが、2011年に入っても観測を続けている。ただし、スピリットの方は車輪が砂地にはまって動けない状態になってしまった(2011年1月移動断念、静止点として観測を続ける)。アメリカはさらに、2005年8月に、マーズ・リコネサンス・オービターを打ち上げ、こちらは2006年11月から火星の周りを回る周回軌道からの観測を行っている。搭載されているカメラの解像度は1mだとい� �。

※ マーズ・クライメート・オービターの失敗の原因は、メートル法を使っているチームと、フィート・ポンド法を使っているチームが混在し、メートル法で送るべき指令をフィート・ポンド法で送ってしまい、火星に近づきすぎたためだという。

 ヨーロッパは2003年にマーズ・エクスプレスを打ち上げた。これは火星のまわりを周回する周回機と着陸機(ビーグル2)に別れている。周回機は成功したが、着陸機との送信ができず、こちらは失敗した。

 日本が1998年7月に打ち上げたプラネットB(のぞみ)は、地球を利用して加速するスウィングバイ(スイングバイ)がうまくいかず、結局2003年12月に火星周回軌道に乗せることを断念した。

 その他、火星探査機の一覧表は「月探査情報ステーション」を参照。

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火星の生物:バイキング1号、2号は(1)呼吸を行うものはいるか、(2)栄養物を取り込むものはいるか、(3)光合成を行うものはいるかの3つの実験を行ったが、結果は否定的であった。ただし、これは火星に生物はいないという証明ではなく、バイキングが着陸した地点(付近)には、生物はいないだろいうということである。一般に「いない」という証明は至難である。どこかにいることがわかれば、簡単に覆ってしまう。

 なお、火星起源の隕石(火星に大隕石が衝突した際、巻き上げられた火星の岩石が隕石となって地球に落ちてきたもの)の中に生物らしきものが見つかったという報告がなされたこともある(1996年)。ただし、これも確定的な話ではない。この件については「月探査情報ステーション」を参照。

 かつて、火星の生物の存在を強く主張していたのは、アメリカのパーシバル・ローウェル(1855年〜1916年)だった。かれは子供のころから天文学者になりたかったのだが、家の都合で大学(ハーバード)を出ても学者にはなれなかった。そこでローウェルは貿易の仕事をしてお金を貯め(大金持ちになり)、自分で大きな望遠鏡を持った天文台(ローウェル天文台)をつくり観測を行った。ローウェルは火星の表面の黒い模様を「運河」と解釈した。これは乾燥した、でも火星の中では比較的暖かい赤道に、極地方から水を引くためのもので、地球からも見えるほどの巨大な運河を建設できるのだから、高度な文明を持った火星人がいるに違いないと思い込んで、それを主張し続けた。現在の火星探査機の精密な写真を見たら、なんと� �うだろうか。なお、ローウェルは海王星よりも遠い惑星の探査も一生懸命行った。この件についてはめい王星の項を参照。また、貿易の仕事で日本に長期滞在して、日本人の観察記録も残している。

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このページの参考になるサイト

日本惑星協会:

宇宙航空研究開発機構のオンライン・スペースノート:

The Nine Planets(英語): Planet」→「nine() Planet」としている。

NSSDC Photo Gallery(英語):

東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻:

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