2012年4月12日木曜日

ペットフクロウのエサ


◎ペットフクロウのエサ◎

ペットフクロウの食餌 
  飼育下におけるフクロウの健康維持のために、エサは大変重要です。しかし現在、公にされているフクロウの食餌に関する情報は、極めて不足しています。毎日のエサの要求量ひとつをとっても、厳密なデータはありません。近い例で、飼育下におけるタカなどの猛禽類から得られたデータは、ある程度参考になると考えられます。これによると、猛禽類の一日の餌要求量は、その種類によって体重の4~25%とばらつきが大きいことが分かっています。そして小型のものほど体重当たりのエサ要求割合は高く、大型のものほど低い傾向にあります。

また当然のことながら、各個体においても日々のエサ要求量は変化します。外気温などの環境因子や、生理的活性レベルから影響を受けるためです。繁殖中なら産卵によるメスの消耗や繁殖成績をあげるため、特にバランスのとれた食餌を与えなければなりません。猛禽ブリーダーのなかには繁殖中、猛禽用の一般的なビタミン・ミネラルサプリメントを多く使っているところもあります。しかしこれに関しては疑問の声が上がっています。猛禽類の栄養要求量がいまだ良く分かっていないため、そのようなサプリメントを作ること、またそれを栄養内容が知られていないエサ動物に対して適切に使うことは難しいと考えられるためです。例えば、受胎率をあげるといわれるビタミンEの入ったサプリメントは、ブリーダ� ��の間で信仰されていますが、このビタミンの受胎能を上げる効果は、今のところラットでしか証明されていません。その上、ビタミンEは脂溶性であるため、無分別に添加することは賢明ではなく、他の脂溶性ビタミンA、D、Kのように過剰投与の危険があり、病気を引き起こす可能性も有ります。

ケージ飼いの猛禽類にはエサとして、しばしば初生雛があたえられています。特に小型のハヤブサなどでは、これのみで健康状態を維持することが可能で、繁殖でも一定した成功を収めていることが報告されています。しかし単調なエサのみでの飼育は、鳥にとって最高の状態とはいえず、やはり最も良いのは本来の食性に近い「病原菌に汚染されていない・新鮮で・様々な種類の・丸ごとの」エサ動物を利用して飼養することです。

「汚染のないエサ」は当然のように考えられていますが、生ものを食べているフクロウにとっては常に考慮する必要があります。例えば1994年イングランドからドイツに輸入された冷凍ウズラが原因で、いくつかのブリーダーで全ての若いハヤブサが死亡してしまうという事故が発生しました。これは、冷凍ウズラがパスツレラ菌に汚染されていたために生じたものです。残念ながら、エサ動物の病原微生物検査は、ほとんど行われていないのが実情です。しかし飼い主みずからが検査を行って利用するのも現実的ではありませんので、より安心して与えられるエサを選択して利用することが、唯一最善の防衛策と考えられます。また屋外の禽舎で飼育している場合、エサを置く場所も重要となります。エサを置く場所が地 面に近ければ、それだけ禽舎床や排せつ物などによる汚染の危険性が増します。地面にはクロストリジウムなどの病原菌が潜んでいる可能性もあるからです。

「できるだけ新鮮なエサ」を与えることも非常に重要です。常温で生ものは急速に腐敗が進みますので、一般的な腐敗菌の増殖は常に考慮しなければなりません。しかし新鮮といっても、場合によっては逆に危険なケースもありえます。フクロウの伝染病リスクは時に餌からもたらされることがあります。家禽やハトを餌として与えていると、新鮮であるほど寄生虫などのリスクが高まることになります。特に若いフクロウはこのような感染症に対して非常に弱く、命を落とす可能性も有ります。


何は、食品の腐敗を引き起こす

「さまざまな種類のエサ」は、各種栄養素をおぎない、偏りを防ぐ意味で大変好ましいです。一種類のみの単調なエサを与えられた場合、そのフクロウにとって最良の状態をキープすることは難しくなります。例えば、同じ猛禽類のタカにおいて、Klostersと Meisterは初生雛のみを与えると慢性的な鉄欠乏性貧血症になる可能性があるのではないかと指摘しています。特に狩りの期間毎日訓練されるようなタカで、そのような疑いのある単調なエサのみを与えていたら、最高の成績はほぼ得られないと考えられます。

 「丸ごとのエサ」は、物質の原則として全ての臓器を含む新鮮なエサ動物は、野生フクロウの食性と比べてみても、栄養的に好ましいということです。例えば、人間が食べている骨なしの肉(骨格筋)は、非常にカルシウムが不足しています。一般に食肉組織(鶏肉や牛肉など)はリン酸濃度が高く、これのみで飼育された場合、生体にとって最も重要なミネラルであるカルシウムとリンの比率が、極端に低下してしまいます。もちろんフクロウは食餌中のミネラルバランス不均衡に対して、ある程度適応する能力がありますが、長期にわたる栄養失宜は避けなければなりません。丸ごとのエサ動物には個体を構成する全ての栄養素が含まれており、大きな動物のごく一部だけを与えられた結果しばしば生じる、栄養欠� ��症の進行を予防することができます。また丸ごとの動物なら、その外皮によって肉の急速な乾燥も防ぐことができますし、ペリットの材料になる羽毛や毛皮も含まれているといったメリットもあります。エサにペリットの材料が少ないと、屋外禽舎では鳥が地面から砂や砂利をフードと一緒に過剰に取り込んで健康を害してしまうこともありえます。さらに、「馬肉を与えると精がつく」といわれることがありますが、猛禽類では痛風を促進することが報告されていますので、避けるほうが賢明でしょう。


 初生雛
 小型げっ歯類
 ウズラ(成鳥)
 魚
 ミルワーム
 シルクワーム

ペットフクロウ&ペットミミズクの飼い方

フクロウやミミズクの仲間は世界中に約200種類ほどおり、小さなスズメフクロウから大きなワシミミズクまで、さまざまな種類がペットとして流通しています。これら全ての種に対して適切な飼養管理を行うことは大変困難を極めることですし、またフクロウ類はメジャーなペットではありませんので、実際の飼育方法は手探りの部分があることも否めません。しかし少しずつではありますが確実に飼育方法の経験や実績は蓄積されてきています。これらを踏まえフクロウ・ミミズクの飼育方法をここで簡単にご紹介したいと思います。フクロウ・ミミズクの飼い方に関する技術はまだまだ発展途上で、今後とも改善されていくべきものです。フクロウ飼育を手掛ける皆様のお知恵も拝借し、情報を共有できれば幸いです。

1.フクロウ・ミミズクへのエサの与え方


形質細胞の機能は何ですか?

自然界でのフクロウ・ミミズクは生きている獲物を捕って食べる、肉食のハンターです。飼育下でもエサは動物系にものになりますが、今のところフクロウ専用の良質なペットフードはありません(外国製の猛禽フードはありますが嗜好性などが問題)。このためフクロウ類のエサは野生下で食べているエサを参考に、数種類の生の(または冷凍の)エサ動物を組み合わせて与えることになります。具体的には、昆虫(コオロギ、ミルワーム、シルクワームなど)、マウス、ラット、ヒヨコ(初生雛)、ウズラ(成鳥、雛)などを組み合わせて与えます。単一のエサを長期に渡り用いることは、栄養の偏りが出てくる可能性があるので避けたほうが賢明です。昆虫類は主にコノハズクなどの小型ミミズク用に、ラットや成ウズラは主に大型のフクロウ用に用いられることが多いです。人間用の精肉は、ミネラル等栄養素の偏りが大きいため、基本的に与えません。さらにペット用のサプリメントを添加することもありますが、現在フクロウ類の真の栄養要求量は分かっておらず、やみくもに使うのは危険です。

給餌の頻度は11~数回で、一度に食べる量が少ない場合には分けて与えると良いでしょう。小型フクロウでは危険なので避けた方が賢明ですが、大型フクロウの飼育では、時にエサを抜く日を作るケースや、フライトの訓練をする際、与えるエサの量を減らして体重をしぼるケースがあります。これは栄養失調による衰弱の危険性をはらんでいますし、個体差も大きいので、十分様子を見ながら行うようにしてください。健康であるかどうか分からない時は、エサの量は減らさない方が賢明です。ペットのフクロウで死因の多くを占めているのは「餓死」です。フクロウの健康管理に精通していない方は、むやみにえさを抜いたり、減らしたりしないでください。

フクロウ・ミミズクにエサを与える際、大きいものは切って与える必要があります。野生のフクロウ類はエサ動物を丸呑みにすることが多いですが、フクロウの種類やエサの大きさによってはちぎって食べる場合もあります。また大きなエサが苦手な個体もいますので、ペットフクロウの大きさや個体に合わせて適度な大きさにカットしてから与えると良いでしょう。カットする際、ナイフや包丁では皮の部分が切りにくく思いのほか使い勝手が悪いため、キッチンばさみの利用がお勧めです。

フクロウに与える生のエサは、常温では急速に腐敗が進みます。食べ残したものは早めに処分してください。フクロウの中には、残った餌を隠すのもがいます。このようなエサは病気の原因となりますので、速やかに除去してください。

あと、エサのほか新鮮な水も与える必要があります。猛禽類は食べ物から水分を取っていますのであまり水を飲みませんが、フクロウが飲みたいときにはいつでも飲めるよう、水は常に用意しておきましょう。

2.フクロウ・ミミズクの住環境


内向的には感じるものの反対ません

フクロウ・ミミズクの飼育場所は、もちろん広ければ広いほど良いです。しかし現実問題として、一般の飼育者が動物園のような大型施設を用意するのは至難の業です。実際は小型のフクロウやミミズクなら、少し大きめ(4050㎝角程度)の小鳥用ケージで飼育することができます。一方大型フクロウなら、犬用の大きなケージを利用したり、広めの専用ケージを作ってもらったりすると良いでしょう。また屋外に飼育小屋を建てて飼っている人もいます。ペットショップや展示会などで見かける、オープンな環境にパーチ(止まり木)を設置し、フクロウ・ミミズクをジェス(足ヒモ)につないでおくといった方法がとられることもありますが、飛び立とうとしてヒモに絡まってしまうことがありますので注意が必要です。一方、最近は部屋でフクロウ・ミミズクを放し飼いにする人も増えています。フクロウと人間が住空間を共有することでフクロウは自由に飛び回ることができ、人間とより仲良く(?)なりやすい面もありますが、異物の誤食や隙間への落下など、事故が多いといった問題もあります。フクロウの行動をきちんとチェック・管理できる方でなければ、部屋での放し飼いは難しいでしょう。

フクロウ・ミミズクの住空間にはパーチ(止まり木)と、できれば体を隠せるような場所が設けられると、より快適に暮らすことができます。さらに体重の重い個体では、日常の生活でも足に負担がかかって痛めてしまうことがありますので、これを予防するのに床や止まり木など一部でも人工芝等を張ると、足裏にかかる体重の分散を図ることができます。

3.温度や湿度、日照時間

フクロウ・ミミズクにとって快適な温度は、各フクロウの原産地によって大きく異なります。北方系のフクロウは寒さに強く、冬でも屋外で飼育できる一方、日本の夏はかなり厳しいため暑さ対策が重要になります。南方系のフクロウはそれなりに暑さに強いと考えられますが、汗をかいて温度調節をすることができませんので、やはり夏場は注意が必要です。目安として、人間が快適でいられる温度であれば、大きな問題は起こりません。一方、温度に比べ湿度はあまり重要でないことが多いのですが、湿度が高く有機物が大量に存在する環境は雑菌が増殖しやすいため清潔を心がけ、干し草やウッドチップ等は用いないようにしてください。特にシロフクロウなどカビに弱い種類のフクロウは、夏場の湿気には十� ��な注意が必要です。

日照時間は通常の人の生活に合わせておいて大丈夫です。自然に近い日照時間であればなお良いのですが、飼い主との共同生活のリズムにフクロウもだんだんと慣れてくるはずです。また基本夜行性の鳥であり野生下でも昼間は木の陰などで休んでいますので、定期的な日光浴は特に必要ありません。もし日光浴をさせたい場合には、隠れる場所がないまま直射日光下に置くと、体温が急上昇して危険なことがありますので注意して行ってください。

4.毎日の世話


本来、生き物は規則正しい生活を好みます。フクロウ・ミミズクも同じで、できるだけ決まった時間に決まった世話を行うようにしましょう。フクロウ類は肉食で、糞はそれなりに匂うため、こまめな掃除が必要です。一日一回は飼育場所の掃除を行うようにしてください。エサは決まった時間に一度で食べ切れる量を与え、残したものは早めに回収します。フクロウの中には余ったエサを隠すものがいますので、定期的にチェックして残骸が腐敗する前に取り除きましょう。エサの時間は体重測定を行うのに適しており、毎日計測することで健康管理がしやすくなりますのでおすすめです。その他、水浴びを好むフクロウには定期的に広めの容器に水を入れて与える、フライトの訓練をしている鳥は手に載せて据え� ��行ったりエサを必ず手から与えコミュニケーションを図ったりするなど、個々の鳥に応じて世話を行ってください。

5.爪とクチバシのケア(切り方)

フクロウ・ミミズクに限らず、そもそも鳥類は爪とクチバシが常に伸び続ける生き物です。しかし野生状態であれば日常生活でこれらは摩耗し、一定の長さが保たれるのですが、ペットとして飼われているとあまり摩耗せず、伸び過ぎてしてしまいます。長すぎる爪やクチバシは怪我の原因にもなりますので、定期的なカットが必要です。フクロウ類の爪やクチバシの手入れには、ニッパーや人間用の爪切り、犬用の爪バサミなどが適しており、長くなり過ぎた部分を適切な位置まで切り詰めていきます。一切りでちょうど良い長さにしようとすると、目標を誤り切りすぎてしまうことがあるため、バランスを見ながら少しずつ切り詰めていったほうが上手くいきます。爪もクチバシも中に血管が通っていますので、� ��り過ぎるとかなり出血しますから気を付けて行ってください。万一出血したら、犬用の爪用止血剤(クイックストップ)などを使って止めます。

6.怪我と病気

フクロウ・ミミズクも怪我をしたり病気になったりすることがあります。怪我をしたとき、体重の1%以上の出血は命取りになることがありますので、まずは止血を最優先で行ってください。フクロウ類の怪我や外傷治癒は他の鳥類と大差はありませんので、大きな怪我なら動物病院にかかることをお勧めします。

一方、フクロウやミミズクは羽の抜け替わる時期などに体調を崩しやすく、免疫力が低下して敗血症等になってしまうことがあります。具合が悪ければ食欲がなくなって体重も減少し、さらに弱ってしまいます。食欲不振になるとあっという間に脱水も進んで命にもかかわってきますので、食餌量には十分な注意を払ってください。食欲不振時の応急処置として、水分の多いエサ(初生雛など)を小さく切ったものを強制的に食べさせる方法があります(誤食などによる腸閉塞時は危険ですので給餌はしないでください)。窒息させないよう注意しながら、呑み込めるくらいの位置までエサを口の少し奥の方へ入れてやります。これを一切れずつ行い、数回繰り返して様子を見ます。数時間後、再びエサを与えてみて� ��自主的に食べなければ状態がかなり悪いと考えられますので、動物病院で診てもらった方が良いでしょう。

フクロウ・ミミズクの健康状態の一番の指標は、体重です。個々の健康時の体重と比べて状態を判断する必要がありますので、日々の体重記録は大変重要です。フクロウ類は密な羽毛が生えていますので、見た目だけでは痩せているかどうか判断できません。痩せ具合は胸筋のつき方で分かりますが、胸筋のチェックは慣れないと難しいので、普段の体重と比較する方が確実です。


フリーフライトで体重を減らして人間のところへ戻ってくるよう訓練をする際は、餓死させないよう細心の注意を払って行ってください。エサをねだっていたからといって、健康とは限りません。十分なエサを食べていないと免疫力が下がり、感染症などを引き起こすこともあります。少しでも様子がおかしければすぐに訓練は中止しましょう。

一般に鳥類は病気の症状を表に出さないことが多く、気付いた時には手遅れ…ということにもなりかねません。食欲がない、体重が減っている、動きが悪い、便の状態がいつもと違う、など気になることがあれば、早めに動物病院で診てもらいましょう。ただ実際は、フクロウの診察を行っている動物病院は少なく、家のそばにない可能性もあります。健康な時から、「いざ」という時のために、かかりつけの病院を見つけておくことはお勧めです。見つけ方としては、ネットで口コミを調べるほか、めぼしい所には全て電話をし「フクロウは診ているか、検査・処置はどういったことをするか、費用はどれくらいかかるか」を聞いておきます。そして健康診断などで一度受診してみると、緊急時にもあわてずに済むと思 います。

                   
            コキンメフクロウの飼育日誌はこちらから
     

参考文献:

Manfred Heidenreich (1995), Birds of prey medicine and management, Blackwell Science, Inc., MA

J d Hoyo, A Elliott and J Sargatal(1999), Handbook of the birds of the world Vol.5, Lynx edicions, Barcelona

Hand, Thatcher, Remillard and Roudebush, 本好茂一監修(2001),小動物の臨床栄養学第4版, マークモーリス研究所日本連絡事務所, カンザス州トピカ

 Boxes, baskets and platforms / artificial nest sites for owls and other birds of prey, Sue M. Dewar and Colin R. Shawyer, the hawk and owl trust, London

 Fredric L. Frye, 松原哲舟監 (1997), 飼育下爬虫類の食餌,  LLL Seminar



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